ストレスチェック義務対象事業場の拡大
50人未満事業場への義務化に向けた実務対応
労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)により、労働者数50人未満の事業場にも、2028年4月1日からストレスチェックの実施が義務化されます。 本ページでは、企業の人事・法務・コンプライアンス担当者向けに、施行時期、企業実務への影響、今から確認しておきたい事項を整理します。
2026年6月10日に、50人未満の事業場へのストレスチェック義務化の施行日が2028年4月1日と定められました。また、2026年6月30日には、集団分析の実施方法に関する労働安全衛生規則の改正が公布されています。
※本記事は2026年10月13日時点の情報に基づいています。
1 ストレスチェック義務対象事業場の拡大
1-1 改正の概要
労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)により、ストレスチェック制度の対象が拡大されます。
これまで、ストレスチェックの実施は、常時使用する労働者数が50人以上の事業場では義務とされ、50人未満の事業場では当分の間の努力義務とされていました。 今回の改正により、労働者数50人未満の事業場についても、2028年4月1日からストレスチェックの実施が義務化されます。
| 改正法 | 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号) |
|---|---|
| 公布日 | 2025年5月14日 |
| 主な内容 | 労働者数50人未満の事業場について、ストレスチェックの実施義務の対象を拡大 |
| 施行時期 | 2028年4月1日。2026年6月10日に施行期日を定める政令が公布され、施行日が確定しました。 |
| 企業実務上の位置づけ | 現在は施行前ですが、対象となる小規模事業場を有する企業では、施行日までに実施体制、委託先、情報管理、面接指導等の運用を確認・整備する必要があります。 |
1-2 施行時期
改正法では、50人未満の事業場へのストレスチェック義務化について、施行期日は公布後3年以内に政令で定めることとされていました。 その後、2026年6月10日に施行期日を定める政令が公布され、2028年4月1日施行と確定しました。
したがって、2026年10月13日現在、50人未満の事業場に直ちに実施義務が生じているわけではありませんが、施行日は確定しています。 対象となる企業では、2028年4月1日までに、対象事業場の把握、実施者・実施事務従事者の選任、外部委託の要否、個人情報管理、高ストレス者への面接指導等の実施体制を準備する必要があります。
厚生労働省は、小規模事業場向けの実施マニュアル、概要版、周知用リーフレット、モデル規程・社内ルール例等を公表しています。 企業では、これらの資料を参考にしながら準備を進めることができます。
2 企業実務への影響
今回の改正は、特に次のような企業・事業場に影響します。
- 労働者数50人未満の事業場
- 小規模の支店、営業所、店舗、診療所、薬局、教室等を複数運営している企業
- これまで産業医・外部機関との連携体制が十分でなかった企業
- メンタルヘルス不調者対応、休職・復職対応、ハラスメント対応が課題となっている企業
ストレスチェック制度は、単に従業員に質問票を配布して回収するだけの制度ではありません。 実施者・実施事務従事者の選任、結果の取扱い、高ストレス者への面接指導の勧奨、医師による面接指導、就業上の措置、集団分析、個人情報管理など、複数の実務対応が必要になります。
※集団分析(集団ごとの集計・分析)は引き続き努力義務です。2026年6月30日公布の労働安全衛生規則改正により、2027年4月1日から、集団分析は「特定の個人を識別することができない方法」で実施することが規則上明記されます。これは従来の解釈を明文化したもので、集団分析を実施する場合のプライバシー保護に注意が必要です。
小規模事業場では、人事担当者や管理者の人数が限られているため、外部委託、産業保健総合支援センター、地域産業保健センター等の活用を含め、現実的に運用できる体制を検討することが重要です。
3 今から確認しておきたい事項
3-1 対象事業場の洗い出し
まず、自社に労働者数50人未満の事業場があるかを確認します。本社だけでなく、支店、営業所、店舗、事業所、教室、診療所、薬局など、事業場単位で確認することが重要です。
3-2 現在のメンタルヘルス対応体制の確認
次に、現在のメンタルヘルス対応体制を確認します。
- 相談窓口はあるか
- 休職・復職のルールは整備されているか
- ハラスメント相談窓口と連携できているか
- 長時間労働者への医師面接指導の運用はできているか
- 産業医、保健師、外部EAP等との連携はあるか
これらを確認しておくと、ストレスチェック義務化への対応も進めやすくなります。
3-3 外部委託の要否
小規模事業場では、自社だけでストレスチェックを実施することが難しい場合があります。その場合、外部機関への委託を検討することになります。
ただし、外部委託をする場合でも、企業側の責任がなくなるわけではありません。委託先の選定、個人情報の取扱い、実施後の対応フローを確認する必要があります。
3-4 社内規程・社内ルールの整備
厚生労働省は、小規模事業場向けの実施マニュアルに加え、編集可能なモデル規程・社内ルール例を公表しています。これらを参考にしながら、自社の実情に応じて次のようなルールを確認・整備します。
- ストレスチェック実施規程
- 個人情報の取扱いルール
- 高ストレス者対応フロー
- 医師面接指導の申出手続
- 人事・上司への情報共有ルール
- 休職・復職制度との接続
- ハラスメント相談窓口との連携
4 企業担当者向けチェックリスト
現時点では、次のような準備から始めることが考えられます。
- 労働者数50人未満の事業場の有無を確認する
- 各事業場の人数、所在地、担当者を整理する
- 現在のメンタルヘルス相談体制を確認する
- 産業医・保健師・外部機関との連携状況を確認する
- ストレスチェックを外部委託する場合の候補先を確認する
- ストレスチェック結果の個人情報管理方法を検討する
- 高ストレス者が出た場合の対応フローを確認する
- ハラスメント相談、長時間労働対応、休職・復職制度との連携を確認する
- 厚生労働省のモデル規程・社内ルール例を確認し、自社での整備方針を検討する
- 労働基準監督署へのストレスチェック実施結果の報告は、常時使用する労働者が50人以上の事業場に義務付けられており、50人未満の事業場には報告義務はありません。ただし、この50人の判定では、短時間のパート・アルバイトや派遣先の派遣労働者であっても、常態として使用されている場合には人数に含まれるため、事業場ごとの人数を確認する必要があります。
- 今後更新される省令、指針、通達、Q&A等を継続確認する
5 実務上の注意点
施行日は2026年6月10日公布の政令により確定しています。2026年10月13日現在は施行前ですが、対象となる小規模事業場では、施行日までに実施体制を整える必要があります。
厚生労働省から、小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル、概要版、周知用リーフレット、モデル規程・社内ルール例等が公表されています。また、集団分析については、2026年6月30日に労働安全衛生規則の改正省令が公布されています(2027年4月1日施行)。今後も、省令、指針、通達、Q&A等の更新を確認する必要があります。
長時間労働、ハラスメント、業務負荷、配置、休職・復職対応など、実際の職場環境に応じた対応が必要です。
小規模事業場では、労働者の人数が少ないため、ストレスチェック結果や集団分析結果から個人が推測されるリスクがあります。結果の管理方法、閲覧権限、社内共有範囲には特に注意が必要です。
ストレスチェック義務対象事業場の拡大は、小規模事業場にもメンタルヘルス対策を広げる重要な改正です。もっとも、企業にとっては、単に新たな手続が増えるという問題ではありません。
今後は、小規模事業場であっても、メンタルヘルス対策、ハラスメント対策、長時間労働対策、休職・復職対応を一体として整備することが求められていくと考えられます。特に、複数の小規模拠点を運営する企業では、各拠点任せにするのではなく、本部・人事部門・管理部門が統一的な運用ルールを整備することが重要です。
6 主な参考資料
- 厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/ - 厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令(令和8年政令第195号)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001732547.pdf - 厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/an-eihou/index_00001.html - 厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001678866.pdf - 厚生労働省「労働者数50人未満の小規模事業者の方」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70761.html - 厚生労働省「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について」(令和8年6月30日基発0630第2号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00td0359&dataType=1&pageNo=1 - 厚生労働省「ストレスチェックの『集団分析』を適切に実施しましょう!」
https://www.mhlw.go.jp/content/001725894.pdf
本記事は、企業の人事・法務・コンプライアンス担当者向けに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。 個別の事案に対する法的助言を目的とするものではありません。 法令、政省令、指針、通達、行政資料等は今後変更・更新される可能性がありますので、実際の対応にあたっては、最新の官公庁資料を確認し、必要に応じて弁護士、社会保険労務士、産業医等の専門家にご相談ください。