相談者向け補充説明

会社の破産を考え始めた経営者の方へ

― 「費用がないから相談できない」と思う前にお読みください ―

経営が厳しくなり、会社の破産を検討し始めた経営者の方の中には、

  • 「お金がないから破産するのに、なぜ破産にもお金が必要なのか」
  • 「破産費用が準備できていないので、まだ弁護士には相談できない」
  • 「弁護士に依頼したら、あとは全て弁護士がやってくれるのではないか」

と考えている方も少なくありません。

しかし、実際の法人破産手続は、多くの方がイメージしているものとは少し異なります。

この資料では、法人破産を検討する際に知っていただきたい基本的な事項について説明します。

法人破産の一般的な流れ

段階 内容
① 経営悪化・資金繰り悪化 支払継続が難しくなり、会社の整理を検討する段階
② 弁護士へ相談 会社の資産・負債・従業員・賃貸物件等の状況を確認
③ 弁護士が受任 債権者対応や申立準備を開始
④ 債務の支払停止・資金管理 既存債務の支払を停止し、残された資金を適切に管理
⑤ 申立前の整理作業 残置物整理、在庫処分、明渡準備、資料収集等
⑥ 破産申立て 裁判所へ破産申立書等を提出
⑦ 破産手続開始決定・破産管財人選任 裁判所が破産管財人を選任し、管財業務が開始
⑧ 手続終了 財産調査・換価・配当等を経て手続が終了

ポイント
法人破産では、「弁護士に依頼してすぐ申立て」ではなく、申立前の整理作業が重要になることがあります。

法人破産でよくある誤解

よくある誤解 実際の考え方
お金がないから破産できない 費用確保の方法を検討できる場合があります
破産費用を全額準備してから相談すべき むしろ資金が残っている段階で早めに相談することが重要です
弁護士に依頼すれば、あとは全部やってもらえる 代表者・役員の協力が必要です
会社資金が完全になくなってから相談すればよい 資金が枯渇してからでは、手続が困難になることがあります
代表者や親族が必ず費用を出さなければならない 法的義務があるわけではありません。ただし、任意の援助が行われることはあります

ポイント
「破産費用がないから相談できない」と考える前に、早めに相談することが重要です。

なぜ会社の破産には費用が必要なのか

会社の破産は、単に裁判所へ申立てを行えば終わる手続ではありません。会社を適切に整理し、事業を終了させるためには、様々な作業や手続が必要になります。

例えば、

  • 事務所や店舗、倉庫の明渡し
  • 残置物の撤去や処分
  • 商品在庫や備品の売却・処分
  • リース物件の返還
  • 機密文書や個人情報を含む資料の整理・廃棄
  • パソコンやサーバー等のデータ整理
  • 従業員関係書類の整理

などです。

これらは、会社が事業を終了する以上、破産するか否かにかかわらず必要となる作業であり、多くの場合、運搬費用や廃棄費用、明渡費用等が発生します。

また、これらの作業を何もしないまま破産手続に移行すると、後に破産管財人が対応しなければならず、結果として手続が長期化したり、より多くの費用が必要になったりすることがあります。

そのため、法人破産の実務では、弁護士が受任した後、破産申立てを行うまでの間に、可能な範囲で残置物の整理や在庫の処分、明渡し準備等を進めておくことが少なくありません。これにより、手続をより円滑に進めることができ、結果として債権者や関係者の負担を軽減できる場合があります。

破産費用は何に使われるのか

費用の種類 主な内容 なぜ必要か
明渡費用 事務所・店舗・倉庫の返還 賃貸物件を整理して返還するため
残置物処分費用 什器、備品、不用品、廃棄物等の処分 物件明渡しや手続の円滑化のため
在庫整理費用 在庫の売却、搬出、廃棄 財産を整理し、換価・処分するため
裁判所予納金 破産管財人の業務や手続運営のための費用 破産手続を適切に進めるため
弁護士費用 申立準備、資料整理、債権者対応、裁判所対応等 法人破産の申立てを適切に行うため

ポイント
破産費用は、弁護士費用だけではありません。会社を適切に終了させるための現実的な費用が含まれます。

裁判所へ支払う予納金は、主として破産管財人による財産調査や換価業務など、破産手続を適切に進めるための費用として用いられるものです。

また、申立代理人である弁護士の報酬についても、単に申立書を作成するための費用ではありません。会社の財産や負債の調査、債権者一覧表の作成、従業員対応、取引先対応、資料収集や整理、裁判所や破産管財人との対応など、多くの業務を行うための費用です。

破産費用は相談時に全額用意しておく必要があるのか

「破産に必要な費用が用意できていないので、まだ弁護士には相談できない」と考える経営者の方もおられます。

しかし、実際には、弁護士に相談した時点や受任した時点で、直ちに破産手続に必要な費用の全額を準備しておかなければならないとは限りません。

法人破産では、弁護士が受任した後、一般的には既存の債務の支払を停止し、会社財産や資金の管理を行いながら破産申立ての準備を進めることになります。

その結果、それまで借入金や買掛金等の支払に充てられていた資金を、破産手続に必要な費用や会社の整理に必要な費用に充てることができる場合があります。

そのため、弁護士受任後、一定期間をかけて資金管理を行いながら、予納金や申立費用、残置物処分費用、明渡費用等を確保し、その後に破産申立てを行うケースも少なくありません。

もちろん、事案によって必要となる費用や準備期間は異なりますが、「費用が十分に用意できてから相談する」のではなく、「まだ一定の資金が残っている段階で相談する」ことが重要です。

資金が完全になくなってから相談すると、必要な処分費用や予納金を確保できず、かえって破産手続の実施自体が困難になることがあります。

よくある考え方と実務上望ましい考え方

よくある考え方 実務上望ましい考え方
破産費用が必要と言われる まず必要な費用の内容を確認する
まだ費用が足りない 早めに弁護士へ相談する
もう少し事業を続けて費用を貯めようとする 会社の資産・負債・必要費用を確認する
その間に会社資金が減少する 受任後、必要に応じて支払停止・資金管理を行う
資金が枯渇してから相談する 申立費用や整理費用の確保を検討する
結果として破産申立てが困難になることがある 準備を整えたうえで破産申立てを行う

ポイント
大切なのは、
「費用が準備できてから相談する」ことではなく、
「費用がなくなる前に相談する」ことです。

会社に十分な資金が残っていない場合

会社に十分な資金が残っておらず、会社財産だけでは破産手続に必要な費用を確保することが難しい場合もあります。

しかし、そのような場合であっても、直ちに破産申立てが不可能になるとは限りません。

事案によっては、会社財産の換価や資金管理によって必要な費用を確保できる場合があります。また、代表者個人が資金を拠出したり、代表者の家族や親族が任意に資金援助を行ったりすることによって、法人破産に必要な費用の一部を準備するケースも実務上見られます。

もっとも、代表者の家族や親族に会社の債務を支払う法的義務があるわけではありません。また、どのような方法が適切かは、代表者個人の資産状況や保証債務の有無などによって異なります。

そのため、会社の資金だけでは費用の準備が難しい場合であっても、「破産費用がないから相談しても意味がない」と考えるのではなく、まずは状況を整理し、どのような方法が考えられるかを検討することが重要です。

破産申立ては弁護士だけで進められるものではありません

法人破産について、「弁護士に依頼したら、あとは弁護士がすべて対応してくれる」と考えられる方がおられます。

しかし、実際の法人破産手続は、弁護士だけで進められるものではありません。

会社の事業内容や財産の状況、取引先との関係、在庫や備品の所在、帳簿や契約書類の保管場所などは、会社の代表者や役員の方でなければ分からないことが少なくありません。

そのため、法人破産では、

  • 会社財産や負債に関する情報提供
  • 帳簿や契約書類等の収集
  • 在庫や備品の確認
  • 残置物の整理や処分への協力
  • 事務所や店舗等の明渡し準備
  • 従業員関係資料の整理
  • 各種資料の確認や説明

などについて、代表者や役員の方々の協力が必要になります。

特に、残置物の整理や明渡し準備、会社財産の確認などは、代表者や役員の方の協力がなければ進めることが困難な場合が少なくありません。

申立代理人である弁護士は、法的な助言や手続の進行、裁判所や破産管財人への対応を行いますが、会社内部の事情を最もよく理解しているのは代表者や役員の方々です。

そのため、法人破産は「弁護士に任せれば終わり」というものではなく、弁護士と代表者・役員が協力しながら進める手続であるとご理解いただくことが重要です。

早期相談が重要です

裁判所に納める予納金や弁護士費用、各種処分費用は、「破産のための費用」というよりも、「会社を適切に終了させ、従業員、取引先、債権者への混乱をできる限り少なくするために必要な費用」と理解するのが実情に近いといえます。

法人破産では、相談が早ければ早いほど、残された資金や財産を有効に活用しながら、適切な方法を検討できる可能性が高くなります。

そのため、「破産費用が準備できてから相談する」のではなく、「経営に行き詰まりを感じた段階で早めに相談する」ことが、結果として会社や関係者の負担を軽減することにつながります。

経営状況に不安を感じた場合には、早い段階で専門家に相談し、今後の対応を整理することが重要です。