2026年12月25日から、「日本版DBS」とも呼ばれる「こども性暴力防止法」が施行されます。そこで、子どもに関わる事業者に向けて、同法の概要と実務上留意すべき点などについて説明しました。
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2026年12月25日から、「日本版DBS」とも呼ばれる「こども性暴力防止法」が施行されます。そこで、子どもに関わる事業者に向けて、同法の概要と実務上留意すべき点などについて説明しました。
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2026年(令和8年)1月1日、いわゆる下請法は「取適法」へと改正・施行されました。正式名称は、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」であり、略称は「中小受託取引適正化法」、通称は「取適法」とされています。
今回の改正は、単に法律名を変更したものではありません。「下請」という名称から連想される古典的な下請構造だけでなく、製造、修理、情報成果物作成、役務提供、運送などの委託取引において、中小受託事業者との取引を適正化する趣旨をより明確にするものです。
もっとも、事業者間の委託取引であれば、すべて取適法の対象になるわけではありません。企業としては、2026年1月1日以降の発注について、対象となる取引類型、委託事業者・中小受託事業者の規模要件、支払方法、価格協議の運用、運送委託の有無などを確認する必要があります。
※本記事における取適法の条文番号及び内容は、特に断りのない限り、2026年(令和8年)1月1日施行時点の「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」を前提としています。個別の取引については、契約内容、取引実態、事業者規模、発注時期等により判断が異なる場合があります。
本記事では、施行済みの取適法について、制度の概要、旧下請法からの主な改正ポイント、企業担当者が誤解しやすい点、施行後に確認すべき実務対応を整理します。
特に、企業実務上重要なのは、次の点です。
取適法対応は、単に契約書の表題を変更するだけの対応ではありません。現在の発注・購買・外注・物流・支払実務が、施行後の取適法に対応しているかを点検する必要があります。
取適法は、製造委託等に関し、中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等を防止することによって、委託事業者の中小受託事業者に対する取引を公正にするとともに、中小受託事業者の利益を保護することを目的とする法律です。
企業実務では、法務部門だけでなく、購買、調達、外注管理、製造、物流、情報システム、経理など、複数の部門に関係します。
特に、対象取引類型や事業者規模の確認、発注時の明示事項、禁止行為、記録の作成・保存は、取適法対応の基本になります。
取適法第1条は、同法の目的として、製造委託等に関し、中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等を防止することにより、委託事業者の中小受託事業者に対する取引を公正にするとともに、中小受託事業者の利益を保護することを定めています。
取適法第2条は、製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、特定運送委託等の定義や、委託事業者・中小受託事業者の規模要件を定めています。
また、発注時の明示については取適法第4条、禁止行為については同法第5条、記録の作成・保存については同法第7条が問題となります。
「下請法」という名称からは、大企業を頂点とした古典的な下請構造が連想されます。しかし、現代の企業間取引では、製造、修理、システム開発、業務委託、物流など、さまざまな委託取引において、発注者と受託者との間に交渉力の差が生じます。
その意味で、取適法は、「下請企業を保護する法律」というよりも、中小受託事業者との委託取引を適正化する法律と理解した方が、今回の改正の趣旨を把握しやすいといえます。
ただし、名称が「下請法」から「取適法」に変わったからといって、すべての事業者間取引が対象になるわけではありません。企業担当者としては、「下請かどうか」という感覚的な判断ではなく、取適法上の対象取引に該当するかを確認する必要があります。
取適法第2条は、対象となる委託取引類型と、委託事業者・中小受託事業者の規模要件を定めています。したがって、取適法が適用されるかどうかは、取引の名称ではなく、同条の要件に該当するかによって判断する必要があります。
取適法は、「下請」という名称から離れ、中小受託事業者との委託取引の適正化を図る法律です。
もっとも、事業者間で何らかの業務を依頼していれば、すべて取適法の対象になるわけではありません。
取適法の適用を考える際には、まず、その取引が取適法第2条に定める製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、特定運送委託などの対象取引類型に該当するかを確認する必要があります。また、委託事業者・中小受託事業者の規模要件についても、同条に基づいて確認する必要があります。
たとえば、自社仕様の部品製造、製品修理の一部外注、顧客向けシステム開発の一部外注、自社が受託した業務の再委託、商品配送の運送委託などは、取適法の対象となる可能性があります。
一方で、市販品やカタログ品をそのまま購入する取引、既製ソフトウェアの購入、建設工事の請負、一般消費者との取引などは、取適法とは別に整理される場合があります。
取適法の対象になるかどうかは、契約書のタイトルではなく、実際の取引内容によって判断する必要があります。「業務委託契約」という名称であっても対象になる場合がありますし、逆に「売買契約」とされていても、自社仕様の製品を製造させている場合には、製造委託に該当する可能性があります。
取適法第2条は、製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、特定運送委託などの対象取引類型を定めています。
また、同条は、委託事業者及び中小受託事業者の範囲を定めています。したがって、取引類型だけでなく、資本金・従業員数などの規模要件も確認する必要があります。
なお、取適法では、従来の資本金基準に加えて従業員基準が追加されています。従業員基準の具体的な内容については、後記「8 従業員基準と対象判定の見直し」で説明します。
取適法はすでに施行されています。したがって、企業としては、2026年1月1日以降の発注について、現在の実務が改正後のルールに対応しているかを確認する必要があります。
施行後に特に確認すべき改正ポイントは、次のとおりです。
対象取引類型や従業員基準については取適法第2条、発注時の明示については同法第4条、価格協議に応じない一方的な代金決定や手形払等を含む禁止行為については同法第5条、記録の作成・保存については同法第7条が主に問題となります。
取適法の施行後、企業実務上、特に重要なのが価格協議への対応です。
原材料費、人件費、燃料費、物流費などが上昇する中で、中小受託事業者から価格改定の申入れを受ける場面は増えています。
取適法のもとでは、価格改定の申入れがあった場合に、必ず値上げに応じなければならないということではありません。
しかし、中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、委託事業者が協議に応じない、必要な説明や情報提供をしないなどして、一方的に代金額を決定する行為は、取適法上の禁止行為として問題となります。
たとえば、価格改定の申入れを放置すること、「全社方針で値上げ不可」とだけ回答すること、資料を確認せずに従来単価を通知すること、協議経過を記録しないことは、実務上リスクがあります。
実務上は、申入れ内容を確認し、必要に応じて資料の提出を求め、協議の場を設け、回答理由を説明し、協議経過を記録することが重要です。
価格協議に応じない一方的な代金決定は、取適法第5条の禁止行為として問題となります。
また、協議経過や代金額、支払条件等について後日確認できるようにするという観点では、取適法第7条に基づく記録の作成・保存も重要です。
取適法の施行後は、支払方法の点検も重要です。
取適法では、対象取引について支払手段として手形を交付することが禁止されています。また、電子記録債権やファクタリングなどについても、中小受託事業者が支払期日までに代金相当額の満額を得ることが困難な支払方法であれば、問題となる可能性があります。
さらに、振込手数料についても注意が必要です。支払方法の変更に伴い、割引料相当額や振込手数料相当額を一方的に代金から控除することは、減額、買いたたき、一方的な代金決定の問題につながる可能性があります。
また、製造委託等代金を支払期日までに支払わなかった場合だけでなく、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに代金を減額した場合にも、遅延利息の問題が生じます。遅延利息の利率は年14.6%とされています。
経理部門だけでなく、購買・調達部門も、支払条件の変更が取引先との価格協議や代金額に影響することを理解しておく必要があります。
手形払等の禁止、減額、買いたたき、一方的な代金決定などの支払方法に関する問題では、主に取適法第5条の禁止行為該当性が問題となります。
代金の支払遅延や、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がない代金減額については、取適法第6条に基づく遅延利息の支払義務も問題となります。
取適法では、特定運送委託が対象取引に追加されました。
これまで、物流・配送の問題は、下請法とは別の領域として受け止められていた企業もあると思われます。しかし、改正により、発荷主が自社の事業のために行う物品の運送を運送事業者に委託する取引について、取適法の適用可能性を確認する必要があります。
特に、製造業、卸売業、小売業、食品、建材、EC事業者など、商品・製品の配送を外部委託している企業では注意が必要です。
運送委託については、運賃額だけでなく、荷待ち、荷役、附帯作業、燃料費上昇分の価格協議なども確認する必要があります。契約書や発注書に明記されていない作業を、慣行として無償で依頼している場合には、実態を確認し、必要に応じて契約内容や対価を見直すことが重要です。
特定運送委託は、取適法第2条に定められる対象取引類型の一つです。
荷待ち、荷役、附帯作業、燃料費上昇分の価格協議などについては、取適法第5条の禁止行為該当性が問題となる可能性があります。また、発注内容や対価、支払条件を明確にするという観点では、取適法第4条及び第7条も重要です。
旧下請法を知っている担当者ほど、資本金基準を中心に対象判定をしている場合があります。
しかし、取適法では、従来の資本金基準に加えて、従業員基準が追加されています。これにより、従来は資本金基準だけで対象外と整理していた取引であっても、従業員基準により取適法の対象となる可能性があります。
従業員基準は、取引類型によって300人基準と100人基準に分かれます。300人基準の対象となるのは、製造委託、修理委託、特定運送委託、プログラム作成に係る情報成果物作成委託、運送・物品の倉庫保管・情報処理に係る役務提供委託です。これに対し、プログラム作成を除く情報成果物作成委託や、運送・物品の倉庫保管・情報処理を除く役務提供委託では、100人基準が問題となります。
公正取引委員会の留意事項では、従業員基準は、資本金基準が適用されない場合に適用されるものと説明されています。もっとも、実務担当者にとって重要なのは、資本金基準だけで対象外と判断しないことです。取引類型に応じて、資本金基準又は従業員基準のいずれかにより、委託事業者・中小受託事業者の組合せが取適法の対象となる可能性があります。
従業員基準の確認では、特に次の点に注意が必要です。
公正取引委員会の留意事項では、「常時使用する従業員」について、賃金台帳に記載される従業員を基礎として算定することが説明されています。具体例として、正社員、契約社員、パートタイマー・アルバイト、1か月を超えて引き続き使用される日雇い労働者などが挙げられています。なお、派遣社員は、派遣元が使用者となるため、派遣先事業者の「常時使用する従業員」には含まれないとされています。
実務上は、取引開始時や定期的な取引先確認の際に、資本金だけでなく、必要に応じて従業員数も確認する運用を検討することになります。
もっとも、通常、従業員数を確認するために、取引先から賃金台帳の写しまで取得する必要はありません。取引先確認シート、申告書、定期確認などにより、必要な範囲で確認し、その確認記録を残す方法が現実的です。
委託事業者及び中小受託事業者の規模要件は、取適法第2条に定められています。対象判定では、取引類型、資本金、従業員数、発注内容、発注時期をあわせて確認する必要があります。
公正取引委員会の留意事項では、従業員基準は資本金基準が適用されない場合に適用されること、「常時使用する従業員」の具体例、判断時点、確認の要否等が説明されています。
旧下請法では、「3条書面」「5条書類」という用語が実務上よく使われていました。取適法では、発注時の明示や記録保存について、4条明示・7条記録として整理されます。具体的には、委託事業者は、発注時に一定事項を中小受託事業者に明示する義務を負います。また、給付の内容、代金額、支払期日等について記録を作成し、保存する必要があります。
企業としては、2026年1月1日以降に発注した取適法適用対象取引について、発注書、注文書、電子発注システム、支払記録、価格協議記録などが、取適法第4条・第7条に対応したものになっているかを確認する必要があります。
なお、従来は、電磁的方法による明示には相手方の事前の承諾が必要とされていましたが、改正により、この事前承諾は不要とされています。ただし、中小受託事業者から請求があった場合には、書面を交付する必要があります。発注のデジタル化を進める企業にとっては、実務上重要な変更点です。
電子メール、電子契約、EDIシステム等を利用する場合には、必要事項が明示され、後日確認できる形で保存されているかを確認する必要があります。
発注書や契約書を整備しているだけでは十分とはいえません。実際の発注、仕様変更、追加作業、価格協議、支払処理の過程が、後日確認できる形で残っていることが重要です。
取適法第4条は、委託事業者に対し、発注時に一定事項を中小受託事業者に書面又は電磁的記録により明示する義務を定めています。
取適法第7条は、委託事業者に対し、給付の内容、代金額、支払期日等について記録を作成し、保存する義務を定めています。
中小企業との取引がすべて取適法の対象になるわけではありません。取適法が適用されるためには、対象取引類型、委託事業者・中小受託事業者の規模要件などを満たす必要があります。
契約書のタイトルだけでは判断できません。取適法の適用対象かどうかは、実際の取引内容、発注者の事業内容、相手方の規模要件などによって判断します。
単なる市販品・カタログ品の購入であれば、通常は単なる売買であり、取適法の対象外と考えられます。ただし、自社仕様、自社ブランド、専用加工、専用包装などを指定して製造させている場合には、製造委託に該当する可能性があります。
価格改定の申入れがあった場合に、必ず値上げに応じなければならないわけではありません。しかし、協議に応じない、必要な説明や情報提供をしないなどして、一方的に代金額を決定することは、取適法上問題となります。
電子記録債権やファクタリングであっても、中小受託事業者が支払期日までに代金相当額の満額を得ることが困難な支払方法であれば、問題となる可能性があります。
契約書や発注書の整備は重要ですが、それだけで取適法対応が完了するわけではありません。実際の発注、仕様変更、追加作業、価格協議、支払処理の過程が、後日確認できる形で残っていることが重要です。
取引相手が個人事業主・フリーランスである場合には、取適法だけでなく、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律、いわゆるフリーランス新法の適用も問題となります。中小受託事業者がフリーランスにも該当し、両法のいずれにも違反し得る行為については、原則としてフリーランス新法が優先して適用されるものと整理されています。
もっとも、実務上は、いずれの法律が優先するかだけでなく、取引条件の明示、支払期日、減額禁止、買いたたき禁止、就業環境整備義務などについて、両法の観点から確認しておくことが重要です。
企業としては、少なくとも次の点を確認しておくことが望まれます。
取適法は、2026年1月1日にすでに施行されています。
そのため、企業としては、「施行までに準備する」という段階ではなく、現在の発注・購買・外注・物流・支払実務が取適法に適合しているかを点検する段階にあります。
今回の改正は、「下請」という名称から連想される古典的な下請構造だけでなく、中小受託事業者との委託取引の適正化をより明確にし、価格協議、支払方法、運送委託、適用基準、執行体制などについて、企業実務に重要な見直しを求めるものです。
もっとも、すべての外注・業務委託・事業者間取引が取適法の対象になるわけではありません。企業としては、2026年1月1日以降に発注された取引について、対象取引類型、規模要件、発注内容、支払方法、価格協議、運送委託、記録保存を確認する必要があります。
取適法対応は、法務部門だけの問題ではありません。購買、調達、経理、物流、情報システム部門を含む、発注・支払・外注管理の実務見直しとして取り組むことが重要です。
2025年から2026年にかけて、人事労務・業務委託管理に関する実務対応が重要になっています。本記事では、育児・介護休業法改正とフリーランス・事業者間取引適正化等法について、企業担当者が自社への影響を判断しやすいように整理します。
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2026年は取適法・カスハラ義務化・公益通報者保護法改正・保険業法・資金決済法など、企業実務に直結する重要な法改正が相次ぎます。経産省AI民事責任手引きも含め、業種別の影響と対応チェックリストを整理しました。
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個人情報保護士会が実施する個人情報保護士有資格者向けの研修会で講師を担当しました。
本研修会は、個人情報に関連する事項について、法的部分の強化を図ることにより、より正確かつ深い理解と、実践力を身につけることを目的とし、2日間で10時間にわたる講習を行い、個人情報保護法制の理解と、実際に発生した漏えい等事案の分析などを通して、実務上の留意点の理解を図ります。
≪実施日≫
2026年5月
≪会場≫
オンライン
≪主催≫
一般財団法人 個人情報保護士会
《テーマ等》
個人情報保護士会が実施する講演会で、2026年に予定されている個人情報保護法の改正の見込み等についての講演で講師を担当しました。
≪実施日≫
2026年2月(120分)
≪会場≫
AP秋葉原(会場とオンラインのハイブリッド)
≪主催≫
一般財団法人 個人情報保護士会
《概要等》
個人情報保護法の見直しについて
【主な項目】
「3年ごと見直し」の経緯等
適正なデータ利活用の推進
① 統計情報等の作成にのみ利用される場合の本人同意の緩和
② 本人同意取得に係る例外規定の要件の緩和
リスクに適切に対応した規律
③ 子どもの個人情報に係る規制の明確化および厳格化
④ 顔特徴データ等に係る規律の新設
⑤ 委託の実態に合わせた規律の整備
⑥ 漏えい等発生時の本人通知義務の緩和
不適正利用等の防止
⑦ 特定の個人に対する働きかけが可能となる情報への規制の強化
⑧ オプトアウトによる提供先の身元および利用目的の確認の義務化
規律遵守の実効性確保のための規律
⑨ 勧告および命令の行使の柔軟化
⑩ 違反行為を補助等する第三者への措置の法定
⑪ 罰則の強化および拡大 ※
⑫ 課徴金制度の導入
個人情報保護士会が実施する個人情報保護士有資格者向けの研修会で講師を担当しました。
本研修会は、個人情報に関連する事項について、法的部分の強化を図ることにより、より正確かつ深い理解と、実践力を身につけることを目的とし、2日間で10時間にわたる講習を行い、個人情報保護法制の理解と、実際に発生した漏えい等事案の分析などを通して、実務上の留意点の理解を図ります。
≪実施日≫
2026年2月
≪会場≫
オンラインと会場のハイブリッド
≪主催≫
一般財団法人 個人情報保護士会
《テーマ等》
法人破産を検討している経営者の方向けに、破産費用、申立前の準備、代表者の協力の必要性など、相談前に知っておいていただきたい基本的な事項を整理しています。
― 「費用がないから相談できない」と思う前にお読みください ―
会社の資金繰りに不安が出てきた段階では、「まだ何とか続けられるのではないか」「取引先や従業員に迷惑をかけたくない」と考え、相談を先送りしてしまうことも少なくありません。
経営が厳しくなり、会社の破産を検討し始めた経営者の方の中には、
と考えている方も少なくありません。
しかし、実際の法人破産手続は、多くの方がイメージしているものとは少し異なります。
この資料では、法人破産を検討する際に知っていただきたい基本的な事項について説明します。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| ① 経営悪化・資金繰り悪化 | 支払継続が難しくなり、会社の整理を検討する段階 |
| ② 弁護士へ相談 | 会社の資産・負債・従業員・賃貸物件等の状況を確認 |
| ③ 弁護士が受任 | 債権者対応や申立準備を開始 |
| ④ 債務の支払停止・資金管理 | 既存債務の支払を停止し、残された資金を適切に管理 |
| ⑤ 申立前の整理作業 | 残置物整理、在庫処分、明渡準備、資料収集等 |
| ⑥ 破産申立て | 裁判所へ破産申立書等を提出 |
| ⑦ 破産手続開始決定・破産管財人選任 | 裁判所が破産管財人を選任し、管財業務が開始 |
| ⑧ 手続終了 | 財産調査・換価・配当等を経て手続が終了 |
ポイント
法人破産では、「弁護士に依頼してすぐ申立て」ではなく、申立前の整理作業が重要になることがあります。
| よくある誤解 | 実際の考え方 |
|---|---|
| お金がないから破産できない | 費用確保の方法を検討できる場合があります |
| 破産費用を全額準備してから相談すべき | むしろ資金が残っている段階で早めに相談することが重要です |
| 弁護士に依頼すれば、あとは全部やってもらえる | 代表者・役員の協力が必要です |
| 会社資金が完全になくなってから相談すればよい | 資金が枯渇してからでは、手続が困難になることがあります |
| 代表者や親族が必ず費用を出さなければならない | 法的義務があるわけではありません。ただし、任意の援助が行われることはあります |
ポイント
「破産費用がないから相談できない」と考える前に、早めに相談することが重要です。
会社の破産は、単に裁判所へ申立てを行えば終わる手続ではありません。会社を適切に整理し、事業を終了させるためには、様々な作業や手続が必要になります。
例えば、
などです。
これらは、会社が事業を終了する以上、破産するか否かにかかわらず必要となる作業であり、多くの場合、運搬費用や廃棄費用、明渡費用等が発生します。
また、これらの作業を何もしないまま破産手続に移行すると、後に破産管財人が対応しなければならず、結果として手続が長期化したり、より多くの費用が必要になったりすることがあります。
そのため、法人破産の実務では、弁護士が受任した後、破産申立てを行うまでの間に、可能な範囲で残置物の整理や在庫の処分、明渡し準備等を進めておくことが少なくありません。これにより、手続をより円滑に進めることができ、結果として債権者や関係者の負担を軽減できる場合があります。
| 費用の種類 | 主な内容 | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 明渡費用 | 事務所・店舗・倉庫の返還 | 賃貸物件を整理して返還するため |
| 残置物処分費用 | 什器、備品、不用品、廃棄物等の処分 | 物件明渡しや手続の円滑化のため |
| 在庫整理費用 | 在庫の売却、搬出、廃棄 | 財産を整理し、換価・処分するため |
| 裁判所予納金 | 破産管財人の業務や手続運営のための費用 | 破産手続を適切に進めるため |
| 弁護士費用 | 申立準備、資料整理、債権者対応、裁判所対応等 | 法人破産の申立てを適切に行うため |
ポイント
破産費用は、弁護士費用だけではありません。会社を適切に終了させるための現実的な費用が含まれます。
裁判所へ支払う予納金は、主として破産管財人による財産調査や換価業務など、破産手続を適切に進めるための費用として用いられるものです。
また、申立代理人である弁護士の報酬についても、単に申立書を作成するための費用ではありません。会社の財産や負債の調査、債権者一覧表の作成、従業員対応、取引先対応、資料収集や整理、裁判所や破産管財人との対応など、多くの業務を行うための費用です。
「破産に必要な費用が用意できていないので、まだ弁護士には相談できない」と考える経営者の方もおられます。
しかし、実際には、弁護士に相談した時点や受任した時点で、直ちに破産手続に必要な費用の全額を準備しておかなければならないとは限りません。
法人破産では、弁護士が受任した後、一般的には既存の債務の支払を停止し、会社財産や資金の管理を行いながら破産申立ての準備を進めることになります。
その結果、それまで借入金や買掛金等の支払に充てられていた資金を、破産手続に必要な費用や会社の整理に必要な費用に充てることができる場合があります。
そのため、弁護士受任後、一定期間をかけて資金管理を行いながら、予納金や申立費用、残置物処分費用、明渡費用等を確保し、その後に破産申立てを行うケースも少なくありません。
もちろん、事案によって必要となる費用や準備期間は異なりますが、「費用が十分に用意できてから相談する」のではなく、「まだ一定の資金が残っている段階で相談する」ことが重要です。
資金が完全になくなってから相談すると、必要な処分費用や予納金を確保できず、かえって破産手続の実施自体が困難になることがあります。
| よくある考え方 | 実務上望ましい考え方 |
|---|---|
| 破産費用が必要と言われる | 資金繰りに不安を感じる |
| まだ費用が足りない | 早めに弁護士へ相談する |
| もう少し事業を続けて費用を貯めようとする | 会社の資産・負債・必要費用を確認する |
| その間に会社資金が減少する | 受任後、必要に応じて支払停止・資金管理を行う |
| 資金が枯渇してから相談する | 申立費用や整理費用の確保を検討する |
| 結果として破産申立てが困難になることがある | 準備を整えたうえで破産申立てを行う |
会社に十分な資金が残っておらず、会社財産だけでは破産手続に必要な費用を確保することが難しい場合もあります。
しかし、そのような場合であっても、直ちに破産申立てが不可能になるとは限りません。
事案によっては、会社財産の換価や資金管理によって必要な費用を確保できる場合があります。また、代表者個人が資金を拠出したり、代表者の家族や親族が任意に資金援助を行ったりすることによって、法人破産に必要な費用の一部を準備するケースも実務上見られます。
もっとも、代表者の家族や親族に会社の債務を支払う法的義務があるわけではありません。また、どのような方法が適切かは、代表者個人の資産状況や保証債務の有無などによって異なります。
そのため、会社の資金だけでは費用の準備が難しい場合であっても、「破産費用がないから相談しても意味がない」と考えるのではなく、まずは状況を整理し、どのような方法が考えられるかを検討することが重要です。
法人破産について、「弁護士に依頼したら、あとは弁護士がすべて対応してくれる」と考えられる方がおられます。
しかし、実際の法人破産手続は、弁護士だけで進められるものではありません。
会社の事業内容や財産の状況、取引先との関係、在庫や備品の所在、帳簿や契約書類の保管場所などは、会社の代表者や役員の方でなければ分からないことが少なくありません。
そのため、法人破産では、
などについて、代表者や役員の方々の協力が必要になります。
特に、残置物の整理や明渡し準備、会社財産の確認などは、代表者や役員の方の協力がなければ進めることが困難な場合が少なくありません。
申立代理人である弁護士は、法的な助言や手続の進行、裁判所や破産管財人への対応を行いますが、会社内部の事情を最もよく理解しているのは代表者や役員の方々です。
そのため、法人破産は「弁護士に任せれば終わり」というものではなく、弁護士と代表者・役員が協力しながら進める手続であるとご理解いただくことが重要です。
早期に相談することは、直ちに破産を決めるという意味ではありません。会社の資金状況、債務の内容、従業員や取引先への影響を整理し、どの選択肢が現実的かを確認するためのものです。
裁判所に納める予納金や弁護士費用、各種処分費用は、「破産のための費用」というよりも、「会社を適切に終了させ、従業員、取引先、債権者への混乱をできる限り少なくするために必要な費用」と理解するのが実情に近いといえます。
法人破産では、相談が早ければ早いほど、残された資金や財産を有効に活用しながら、適切な方法を検討できる可能性が高くなります。
そのため、「破産費用が準備できてから相談する」のではなく、「経営に行き詰まりを感じた段階で早めに相談する」ことが、結果として会社や関係者の負担を軽減することにつながります。
経営状況に不安を感じた場合には、会社にどの程度の資金が残っているか、今後どの支払が予定されているか、従業員・取引先・賃貸物件への対応をどうするかを含めて、早い段階で専門家に相談し、今後の対応を整理することが重要です。
顧問先企業の方で、資金繰りや今後の対応に不安がある場合には、破産申立てを前提とするかどうかにかかわらず、早めに状況を共有してください。
個人情報保護士会が実施する個人情報保護士有資格者向けの研修会で講師を担当しました。
本研修会は、個人情報に関連する事項について、法的部分の強化を図ることにより、より正確かつ深い理解と、実践力を身につけることを目的とし、2日間で10時間にわたる講習を行い、個人情報保護法制の理解と、実際に発生した漏えい等事案の分析などを通して、実務上の留意点の理解を図ります。
≪実施日≫
2025年10月
≪会場≫
オンライン
≪主催≫
一般財団法人 個人情報保護士会
《テーマ等》
埼玉県社会保険労務士会大宮支部主催の研修会で、社労士の方向けで、2026年10月にに施行される改正労働施策総合推進法に規定されるカスタマーハラスメントに関する雇用主の雇用管理上の措置に関する研修会の講師を担当しました。
≪開催日≫
2025年10月
≪開催時間≫
14時30分~17時00分
≪会場≫
大宮ソニックシティホール4階国際会議室
《テーマ等》
Ⅰカスタマーハラスメントの知識
1ハラスメントに関する令和7年の改正
2 ハラスメント対策をする際の基本的視点
3 雇用管理上の措置義務と安全配慮義務・職場環境配慮義務
4 カスタマーハラスメントの判断
5 迷惑行為への対応
Ⅱ 企業としてすべきこと
1(事前の予防措置)事業主の基本方針•基本姿勢の明確化、従業員への周知・啓発
2(事前の予防措置)従業員(被害者)のための相談対応体制の整備
3(事前の予防措置)対応方法、手順の策定
(1) 現場での初期対応の方法:現場従業員(一次対応者・受付担当者)
(2) カスハラへの対応方法:現場監督者(相談対応者・対応責任者)
4(事前の予防措置)社内対応ルールの従業員等への教育・研修
5(事後対応)事実関係の正確な確認と事案への対応
6(事後対応)従業員への配慮の措置
7(事後対応)再発防止のための取組
Ⅲ 関連する問題
1 カスタマーハラスメント行為者に成立する可能性のある犯罪行為
2 フリーランスに対するカスハラ