【改正法】2022年4月に施行される成年年齢の改正(民法)について

改正の概要

2022年(令和4年)4月に施行される改正民法により、成年年齢がそれまでの20歳から18歳に引き下げられます(改正後民法4条)。
改正民法が施行(適用)されるのは、2022年4月1日からです。
これにより、2022年4月1日の時点で18歳以上20歳未満の人、つまり2002年4月2日生まれから2004年4月1日生まれまでの人は、2022年4月1日に成年に達することになります。
2022年4月2日生まれ以降の人は、18歳の誕生日になったら成年に達することになります。
成人式については、法律による決まりがないため、各自治体の判断で実施されるようです。


なお、女性の婚姻開始年齢は、これまでは16歳でしたが、今回の民法改正により、18歳に引き上げられました(改正後民法731条)。
女性の婚姻年齢を引き上げたのは、高校等への進学率が98%を超えるまでになった社会状況等に照らし、婚姻をするには18歳程度の社会的・経済的成熟が必要であると考られるに至ったからです。
なお、2022年4月1日の時点で既に16歳以上の女性は、引き続き18歳未満でも結構することができるとされています。

民法改正の影響

成年年齢が引き下げられるのは民法上のことです。
民法では、「未成年者」には、次の規定が適用されるので、民法改正により、次の規定の適用が影響を受けます。

  • 未成年者が法律行為をするには、原則として、その法定代理人の同意を得なければならず、違反する法律行為は取り消すことができる(民法5条1項・2項)。
  • 未成年者は、父母の親権に服する(民法818条1項)。

法律行為

2022年4月1日以降は、18歳になれば、法定代理人(父母など)の同意を得ずに一人で有効な法律行為をすることができます。
つまり、4月1日以降は、18歳、19歳であっても、親の同意を得ずに、携帯電話の購入、アパートを借りる、クレジットカードを作成する、ローンを組んで自動車を購入するといった様々な契約をすることができるようになり、後になって契約を取り消すことができなくなるので、注意が必要です。
この点については政府も注意喚起をしていて、全国共通の3桁の電話番号である消費者ホットライン188の周知や相談窓口の充実など、様々な環境整備の施策に取り組んでいます。
なお、2022年4月1日よりも前は、18歳、19歳の人は「未成年者」なので、4月1日より前に法定代理人(父母など)の同意を得ないで締結した契約は、4月1日以後も取り消すことができます。


【労基法による年少者(18歳未満の者)の保護】

労働基準法には、18歳未満の「年少者」を雇用する場合に、主に以下の規制があり、高校生をアルバイト雇用する場合などに注意が必要です。

  • 事業場には、満18歳未満の者について、その年齢を証明する年齢証明書等(住民票記載事項証明書等)を備えつけなければならない(労基法57条1項)。労基法57条違反の罰則は、30万円以下の罰金です(労基法120条)。
  • 労働契約は本人自身と締結しなければならず、親権者または後見人が未成年者に代わって労働契約を締結してはならない(労基法58条1項)。労基法58条違反の罰則は、30万円以下の罰金です(労基法120条)。
  • 親権者・後見人または所轄労基署長は、労働契約が未成年者に不利であると認める場合、将来に向かって労働契約を解除することができる(労基法58条2項)。
  • 未成年者は、独立して賃金を請求することでき、親権者または後見人は未成年の賃金を代わって受け取ってはならない(労基法59条)。労基法59条違反の罰則は、30万円以下の罰金です(労基法120条)。
  • 18歳未満の者は、原則として、時間外・休日労働を行わせることができず(労基法60条1項。例外は労基法60条3項1号)、変形労働時間制、フレックスタイム制のもとで労働させることもできない(労基法60条1項。例外は労基法60条3項2号)。18歳未満の者を時間外労働・休日労働させた場合は、労基法32条(法定労働時間)または35条(法定休日)の違反となり、罰則は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金です(労基法119条)。
  • 18歳未満の者は、原則として、深夜時間帯(午後10時から翌日午前5時)に労働させることはできない(労基法61条1項。例外は労基法61条3項)。労基法61条違反の罰則は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金です(労基法119条)。

 

親権

18歳、19歳であっても、父母の親権に服さなくなるので、自分の住む場所(居所)を自分の意思で決めたり、進学や就職などの進路を自分の意思で決めることができるようになります。

利用規約等の規定の確認

未成年者が対象となりうるサービスを運営している事業者の場合、利用規約や約款、契約書等のチェックが必要です。
例えば、「20歳未満の未成年者は、保護者が本規約に同意された場合のみ、本サービスをご利用頂くことができます。20歳未満の方が本サービスを利用した場合、保護者の同意があったものとみなします。」という規定がある場合、「18歳」や単に「未成年者」に修正して2022年4月1日から適用できるように準備しておく必要があります。
なお、2022年から18歳、19歳でも単独で契約を締結できるとしても、悪徳商法などによる消費者被害の拡大が懸念されていることから、契約内容等について、わかりやすく、十分に説明するべきであるといえます。十分な説明がなされていないと思われてしまう場合、悪徳業者として企業の評価が下がるなどのレピュテーションリスクが懸念されます。

パスポート、国家資格

パスポートは、未成年者は5年有効パスポートのみ申請可能で、10年パスポートは申請できず、また、未成年者がパスポートを申請するためには「法定代理人」(親権者など)の署名が必要とされています。
民法改正により、18歳、19歳であっても、10年有効パスポートの取得を一人で行うことができるようになります。
このほか、医師、司法書士、行政書士、公認会計士などの国家資格は、未成年者では職に就くことができないと定められているので、試験等に合格するなどの必要はありますが、18歳になれば、その職に就くことができるようになります。

飲酒・喫煙などの年齢制限(影響なし)

飲酒や喫煙については、民法とは別の法律で、20歳未満の者には認められていないので、今までどおり、20歳の年齢制限が維持されるので、注意が必要です。
「公営競技」(競馬,競輪,オートレース,モーターボート競走)の年齢制限も20歳のまま維持されます。

養育費

子を監護しない父母は子を監護する父母に対して養育費を支払う必要があるとされていますが、「未成年の間」は養育費を支払わなければならないと定めた法律はありません。
ですから、子が成年に達していても、「未成熟子」(大学に進学しているなど経済的に自立することが期待できない場合)には養育費を支払うことを要すると解されています。
このため、民法改正によって養育費は18歳まで支払えばよくなるなどということはなく、これまで通りの取扱い(未成熟子がいる場合に養育費を支払う)となります。
なお、養育費支払いの合意については、「子が成年に達するまで」と定めるケースが多かったと思いますが、合意時点で成年が20歳であったのであれば、2022年4月1日以降も、合意当時の成年である20歳までと解釈されることになるでしょう。
これに対し、2022年4月1日以降の合意で「成年に達するまで」と定めると、18歳に達するまでということになってしいます。
実際には、弁護士が合意書を作成する場合は、子が大学進学することが予想される多くの事例で「22歳に達した後の3月まで」というように定めて、未成熟子が想定される期間は養育費が支払われるようにしています。

選挙権(改正済み)

選挙権については、既に2015年の公職選挙法等の改正により、それまでの「満20歳以上」から「満18歳以上」に引き下げられています。