公益通報者保護法改正と企業の内部通報制度の見直し

2025年(令和7年)6月に公益通報者保護法の一部を改正する法律が公布され、2026年(令和8年)12月1日に施行されます。

今回の改正は、公益通報者の保護を強化するだけでなく、企業に対して、内部通報制度の実効性をより強く求める内容となっています。

内部通報制度は、不祥事を外部に出さないための制度ではありません。企業が問題を早期に把握し、是正し、法令違反や社会的信用の毀損を防ぐためのリスク管理制度です。

今回の改正を踏まえると、企業は、単に通報窓口を設置しているだけでは足りず、通報を受けた後の調査、秘密保持、通報者保護、人事措置の判断過程まで含めて、実効的に機能する制度になっているかを確認する必要があります。

1 公益通報者保護法の基本構造

公益通報者保護法は、公益通報をした者に対する不利益取扱いを禁止し、公益通報に関して事業者等がとるべき措置を定める法律です。

同法の目的は、公益通報者の保護にとどまりません。法令違反の是正を通じて、国民の生命、身体、財産その他の利益を保護し、社会経済の健全な発展に資することも目的とされています。

2 保護対象者の範囲が広がっています

改正後の公益通報者保護法では、公益通報を行う主体として、労働者、派遣労働者、役員に加え、特定受託業務従事者、いわゆるフリーランス等も明示されています。

企業実務では、従業員だけでなく、派遣労働者、業務委託先、フリーランス、役員などからの通報についても、公益通報者保護法上の保護対象になり得ることを前提に対応する必要があります。

特に、近年は、業務委託契約、フリーランス、副業・兼業人材、外部専門家の活用が広がっています。内部通報規程が「従業員」だけを対象とする内容になっている場合には、改正法に対応できているかを確認する必要があります。

3 公益通報を理由とする不利益取扱いは禁止されます

公益通報者保護法は、公益通報をしたことを理由として、公益通報者に対して不利益な取扱いをすることを禁止しています。

労働者については、公益通報を理由とする解雇その他不利益な取扱いが禁止されます。派遣労働者については、派遣契約の解除や派遣労働者の交代要求等が問題となります。特定受託事業者については、業務委託契約の解除、取引数量の削減、取引停止、報酬減額等が問題となります。役員については、報酬減額その他の不利益取扱いが禁止され、解任については損害賠償請求の対象となり得ます。

企業としては、公益通報があった後に、解雇、懲戒、降格、配置転換、評価引下げ、契約解除、取引停止などを行う場合には、その措置が公益通報を理由とするものではないことを説明できるようにしておく必要があります。

4 公益通報後の解雇・懲戒には推定規定があります

今回の改正で、企業実務上特に重要なのが、公益通報後の解雇・懲戒に関する推定規定です。

改正後は、公益通報者に対する解雇等特定不利益取扱いが、法定の起算点から1年以内にされた場合には、その解雇等特定不利益取扱いは、公益通報をしたことを理由としてされたものと推定されます。

ただし、この1年の起算点は、通報先によって異なります。

役務提供先等に対する内部通報の場合は、公益通報をした日が起算点となります。これに対し、行政機関への通報又は外部への通報の場合で、事業者がその公益通報がされたことを知って解雇等特定不利益取扱いをしたときは、事業者がその公益通報を知った日が起算点となります。

そのため、特に行政機関への通報や外部通報については、通報日そのものではなく、企業が当該通報の存在を知った時点を把握しておくことが重要になります。外部通報の場合、事業者が通報の存在を後日知ることもあり得るためです。

企業が、公益通報とは別の理由で懲戒処分や解雇を行う場合であっても、法定の起算点から1年以内であれば、公益通報を理由とするものではないことを説明する必要が生じます。

そのため、通報者について人事上の措置を行う場合には、通常以上に慎重な検討が必要です。特に、懲戒処分を検討する場合には、問題行動の内容、指導経過、本人の弁明、処分理由、処分量定の相当性、過去の類似事案との均衡などを記録化しておく必要があります。

5 公益通報を理由とする解雇・懲戒には刑事罰が設けられます

改正後は、公益通報を理由とする一定の不利益取扱いについて、刑事罰が設けられます。

具体的には、労働者に対して、公益通報を理由として解雇等特定不利益取扱いをした場合、行為者に対して、6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金が科され得ます。

また、法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、法人の業務に関してこの違反行為をした場合には、行為者を罰するだけでなく、法人に対しても3000万円以下の罰金刑が科され得ます。

この点は、従来の民事上の無効という効果に加えて、刑事罰のリスクが生じるという意味で、企業の内部通報対応に大きな影響を及ぼします。

もっとも、実務上重要なのは、「刑事罰がある」という点だけではありません。通報後の人事措置について、事前に法務・人事・コンプライアンス部門が連携し、公益通報との関連性が疑われないよう、判断過程を整理しておくことです。

6 通報妨害は禁止されます

改正後は、公益通報を妨げる行為が明確に禁止されます。

例えば、従業員や業務委託先に対して、公益通報をしない旨の合意を求めることや、公益通報をした場合に不利益な取扱いをすることを告げることなどは問題となり得ます。

実務上は、秘密保持契約、退職合意書、和解契約、業務委託契約、誓約書などの文言に注意が必要です。

もちろん、企業秘密や個人情報の保護は重要です。しかし、その文言が、公益通報を萎縮させる内容になっている場合には、通報妨害と評価されるリスクがあります。

特に、退職時の誓約書や和解合意書において、「社内外に一切の情報を漏らさない」「行政機関その他第三者に申告しない」といった包括的な文言を置いている場合には、公益通報者保護法との関係で見直しが必要です。

7 通報者探索は禁止されます

今回の改正で、企業実務上特に注意すべきものの一つが、通報者探索の禁止です。

改正後は、事業者が、正当な理由なく、公益通報者である旨を明らかにすることを要求することその他の公益通報者を特定することを目的とする行為をすることが禁止されます。

現場では、通報があった場合に、管理職や関係部署が、次のような確認をしようとすることがあります。

  • 誰が通報したのか
  • この内容を知っているのは誰か
  • 通報者はおそらく誰か
  • 誰が外部に話したのか

しかし、改正後は、このような対応が通報者探索と評価されるリスクがあります。

もちろん、通報内容を調査するために、関係者から事実確認を行うこと自体が直ちに禁止されるわけではありません。しかし、調査の目的は、通報対象事実の有無を確認することであり、通報者を特定することではありません。

調査担当者は、聞き取りの際にも、通報者の特定につながる質問を避ける必要があります。また、通報内容の共有範囲を必要最小限に限定し、通報者が推測されないよう情報管理を徹底する必要があります。

8 公益通報対応業務従事者の守秘義務

公益通報対応業務従事者には、公益通報対応業務に関して知り得た事項であって、公益通報者を特定させるものを漏らしてはならない義務があります。

内部通報制度では、通報者の秘密が守られるという信頼がなければ、制度は機能しません。

そのため、企業は、公益通報対応業務従事者を形式的に指定するだけでなく、誰がどの範囲で情報にアクセスできるのか、調査資料をどこに保管するのか、メールやチャットでどのように共有するのか、経営層や人事部門にどの段階で報告するのかを明確にしておく必要があります。

特に、通報者を特定させる情報は、氏名に限られません。部署、役職、関与した業務、相談経緯、通報内容の詳細などから、通報者が推測される場合もあります。

9 内部通報体制整備義務と行政措置

企業は、公益通報に適切に対応するため、公益通報対応業務従事者を定め、内部公益通報に応じるために必要な体制の整備、労働者等への周知その他の必要な措置をとる必要があります。

常時使用する労働者の数が300人以下の事業者については、これらは努力義務とされています。しかし、努力義務であっても、内部通報制度を整備しなくてよいという意味ではありません。企業規模、事業内容、不祥事発生時の影響、取引先や親会社からの要請等を踏まえると、中小企業であっても、一定の通報窓口や相談体制を整備しておくことが望ましい場合があります。

また、改正後は、体制整備義務等に関する行政措置も強化されています。ただし、従事者指定義務と体制整備義務では、違反した場合の効果が異なります。

常時使用する労働者の数が300人を超える事業者が公益通報対応業務従事者を定める義務に違反している場合には、助言・指導、勧告、命令、公表、報告・立入検査等の対象となり得ます。

これに対し、内部公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制整備義務に違反している場合には、助言・指導、勧告の対象となり、勧告に従わない場合には公表の対象となり得ますが、従事者指定義務違反の場合と異なり、命令や刑事罰の対象としては整理されていません。

10 企業が誤解しやすいポイント

「通報者を確認しなければ調査できない」という誤解

通報内容の調査は必要です。しかし、調査の目的は、通報対象事実の有無を確認し、必要な是正措置を講じることです。通報者を特定することではありません。

通報者の特定につながる聞き取りや情報共有は、通報者探索と評価されるリスクがあります。

「通報後でも、別の理由があれば懲戒できる」という誤解

通報後であっても、通報とは無関係の理由に基づき、適正な手続で懲戒処分を行うことが常に禁止されるわけではありません。

しかし、公益通報後、法定の起算点から1年以内の解雇等特定不利益取扱いについては、公益通報を理由とするものと推定されます。内部通報の場合は公益通報をした日が起算点となりますが、行政機関への通報又は外部への通報の場合で、事業者がその公益通報がされたことを知って解雇等特定不利益取扱いをしたときは、事業者が当該公益通報を知った日が起算点となります。

そのため、企業側は、通報とは無関係の理由による措置であることを、客観的資料により説明できるようにしておく必要があります。

「窓口を設置していれば足りる」という誤解

内部通報制度は、窓口を設置するだけでは足りません。

通報受付後の調査体制、公益通報対応業務従事者の指定、秘密保持、通報者探索の防止、是正措置、記録管理、通報者への不利益取扱い防止まで含めて、実効的に機能する制度である必要があります。

「匿名通報は対応しなくてよい」という誤解

匿名通報であっても、内容が具体的であり、法令違反や重大な不正の可能性がある場合には、調査・確認が必要となる場合があります。

匿名であることだけを理由に一律に放置する運用は、内部通報制度の実効性という観点から問題があります。

「秘密保持契約で外部通報を防げる」という誤解

企業秘密や個人情報を保護することは重要です。

しかし、公益通報をしない旨の合意を求めたり、公益通報をした場合に不利益な取扱いをすることを告げたりすることは、通報妨害として問題となり得ます。

退職合意書、和解契約、秘密保持誓約書、業務委託契約などの文言は、公益通報者保護法との関係で見直す必要があります。

11 施行までに確認すべきチェックポイント

企業としては、少なくとも次の点を確認しておくことが望まれます。

12 まとめ

2026年12月1日に施行される改正公益通報者保護法は、企業の内部通報制度に大きな影響を与えます。

特に、公益通報後、法定の起算点から1年以内の解雇・懲戒に関する推定規定、公益通報を理由とする解雇・懲戒への刑事罰、通報妨害の禁止、通報者探索の禁止、体制整備義務等に対する行政措置の強化は、企業実務上重要です。

企業にとって重要なのは、通報を抑え込むことではありません。内部通報制度を通じて問題を早期に把握し、適切に調査し、必要な是正措置を講じることです。

今回の改正を契機として、内部通報規程、通報窓口、調査体制、秘密保持、人事措置の判断プロセスを見直し、実際に機能する制度として整備しておくことが重要です。

カスタマーハラスメント対策研修

カスタマーハラスメン対策担当者向けの研修会で講師を担当しました。

≪開催日≫
2026年5月
≪時間等≫
13:00~17:00
AP東京八重洲(オンラインとのハイブリッド)
≪主催≫
一般財団法人日本ハラスメントカウンセラー協会
≪講師≫
坂東利国(東京弁護士会)

《概要》
企業において、お客様対応業務をされている方や、その管理者が日常業務で役立つカスタマーハラスメント対応・防止策を学び、トラブルの未然防止や適切な対応方法を身につける、従業員の安全と職場の安心を守ることを目的します。

(講義内容)
Ⅰ職場におけるカスタマーハラスメントの知識
 1 カスハラ対策の必要性
 2 カスハラに関する事業主の義務
 3 カスハラの判断
 4 迷惑行為への対応
Ⅱ カスハラを想定した事前の準備
 1 事業主の基本方針•基本姿勢の明確化およびその周知・啓発
 2 相談・苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
 3 顧客等への初期対応について
 4 カスハラへの対応方法について
 5 内部手続の方法、手順を定める
Ⅲ カスハラが発生した場合の事後対応等
 1 事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認する
 2 被害者への配慮の措置
Ⅳ その他の措置等
 1 悪質クレーマー対応
 2 カスハラ行為者に成立する可能性のある犯罪行為

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育児・介護休業法とフリーランス法対応(2026年5月)

2025年から2026年にかけて、人事労務・業務委託管理に関する実務対応が重要になっています。本記事では、育児・介護休業法改正とフリーランス・事業者間取引適正化等法について、企業担当者が自社への影響を判断しやすいように整理します。

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プライバシー実務研修

プライバシーに関連して、企業担当者等が知っておきたい知識と裁判例を学ぶ講習会で講師を担当しました。

≪開催日≫
2026年3月
≪時間等≫
13:00~16:00
オンライン
≪主催≫
一般財団法人 全日本情報学習振興協会
≪講師≫
坂東利国(東京弁護士会)

《概要》
企業において問題となりうるプライバシーに関連する事項について、実際の事例や法律の基礎知識とともに学ぶ

(講義内容)
Ⅰ「プライバシー」と「プライバシー権」
Ⅱ プライバシーを保護する法的枠組み
 1 プライバシーに関連する法令の定め
 2 刑罰:名誉毀損罪について
 3 事後的救済:不法行為に基づく損害賠償
 4 事後的救済:不法行為が成立しない場合(「公共の利害に関する事実に係る」場合)
 5 事後的救済:妨害排除請求・差止請求
 6 事後的救済:情報漏えい事故と損害賠償
Ⅲ 個人情報漏えいによるプライバシー侵害のリスクマネジメント
Ⅳ 漏えい事故によるプライバシー侵害
Ⅴ 撮影(私的情報の取得)に関する問題
Ⅵ 労働関係におけるプライバシー
 1 業務命令とプライバシー
 2 モニタリング
 3 SNSとプライバシー
 4 従業員の写真掲載

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ハラスメント関連業務

経歴・取扱業務

カスタマーハラスメントに関する雇用管理上の措置を講ずる担当者向け研修

2025年6月に改正された労働施策総合推進法(施行は2026年10月)で定められたカスタマーハラスメント問題に関する事業者の雇用管理上の措置を検討・整備する方向けの研修会で講師を担当しました。

≪開催日≫
2026年2月
≪時間等≫
10:00~17:00
AP秋葉原(オンラインとのハイブリッド)
≪主催≫
一般財団法人日本ハラスメントカウンセラー協会
≪講師≫
坂東利国(東京弁護士会)

《概要》
お客様対応をされている方よりも上位者の現場監督者や、カスハラの予防措置、カスハラが発生した際の対応について、相談対応等の組織体制の整備等の雇用管理上の措置を検討し構築する担当者(リスクマネジメント担当者)に必要と思われる知識等について、裁判例や実務上の知見に基づく講義をします。

(講義内容)
Ⅰ職場におけるカスタマーハラスメントの知識
 1 カスハラに関する法令の状況
 2 カスハラ対策における基本的視点
 3 カスハラに関する事業主の義務
 4 カスハラの判断
 5 状況に応じた対応
Ⅱ 企業としてすべきこと
 1(事前の準備)事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
 2(事前の準備)相談・苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
 3(事前の準備)対応方法、手順の策定
  (1) 顧客等への初期対応について定める
  (2) カスハラへの対応方法を定める
  (3) 内部手続の方法、手順を定める
 4(事前の準備)社内対応ルールの従業員等への教育・研修
 5(事後対応)カスハラに係る事後の迅速かつ適切な対応
  (1) 事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認する
  (2) 被害者への配慮の措置
  (3) 再発防止に向けた措置
 6 その他のカスハラ抑止の措置等
Ⅲ 関連する問題
 1 カスハラ行為者に成立する可能性のある犯罪行為
 2 (参考)ハラスメント問題に関する令和7年改正の概要
 3 フリーランスに対するカスハラ
 4 取適法について
 5(参考)カスハラ関する法的対応(民事上の請求等)
 6 (参考)カスハラと労災

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ハラスメント関連業務

経歴・取扱業務

個人情報保護法の改正(予定)に関する講演

個人情報保護士会が実施する講演会で、2026年に予定されている個人情報保護法の改正の見込み等についての講演で講師を担当しました。

≪実施日≫
2026年2月(120分)
≪会場≫
AP秋葉原(会場とオンラインのハイブリッド)
≪主催≫
一般財団法人 個人情報保護士会

個人情報保護法の見直しについて

【主な項目】

「3年ごと見直し」の経緯等
 適正なデータ利活用の推進
  ① 統計情報等の作成にのみ利用される場合の本人同意の緩和
  ② 本人同意取得に係る例外規定の要件の緩和
 リスクに適切に対応した規律
  ③ 子どもの個人情報に係る規制の明確化および厳格化
  ④ 顔特徴データ等に係る規律の新設
  ⑤ 委託の実態に合わせた規律の整備
  ⑥ 漏えい等発生時の本人通知義務の緩和
 不適正利用等の防止
  ⑦ 特定の個人に対する働きかけが可能となる情報への規制の強化
  ⑧ オプトアウトによる提供先の身元および利用目的の確認の義務化
 規律遵守の実効性確保のための規律
  ⑨ 勧告および命令の行使の柔軟化
  ⑩ 違反行為を補助等する第三者への措置の法定
  ⑪ 罰則の強化および拡大 ※
  ⑫ 課徴金制度の導入

分野

社内研修講師・セミナー講師

弁護士

坂東利国

個人情報保護士向け実務講習

個人情報保護士会が実施する個人情報保護士有資格者向けの研修会で講師を担当しました。

本研修会は、個人情報に関連する事項について、法的部分の強化を図ることにより、より正確かつ深い理解と、実践力を身につけることを目的とし、2日間で10時間にわたる講習を行い、個人情報保護法制の理解と、実際に発生した漏えい等事案の分析などを通して、実務上の留意点の理解を図ります。

≪実施日≫
2026年2月
≪会場≫
オンラインと会場のハイブリッド
≪主催≫
一般財団法人 個人情報保護士会

《テーマ等》

  • 1日目(個人情報保護法制)
    Ⅰ 総論
    Ⅱ 用語の定義(法2条,16条)
    Ⅲ 個人情報に関する義務(法17条~21条)
    Ⅳ 個人データに関する義務(法22条~30条)
    Ⅴ 保有個人データに関する義務(法32条~39条)
    Ⅵ 罰則(法176条~185条)
    Ⅶ 実効性を担保する仕組等 Ⅷ 外国にある第三者への提供に関連する規制(法28条)
    Ⅸ 雑則
    (参考)令和2年改正個人情報保護法
  • 2日目(個人情報保護法性続き,マイナンバー法,安全管理措置)
    Ⅹ 仮名加工情報取扱事業者等の義務(法41条・42条)
    Ⅺ 匿名加工情報取扱事業者等の義務(法43条~46条)
    Ⅻ 個人関連情報(法31条)
    ◯ マイナンバー法とマイナンバー制度
    ◯ 安全管理措置等
     Ⅰ 漏えい等の報告と本人への通知
     Ⅱ 個人データの安全管理措置
      1 情報セキュリティマネジメントシステム
      2 リスクアセスメントにおける個人情報の洗い出し
      3 安全管理措置を講ずるための具体的な手法
     Ⅲ 委託先の監督
     Ⅳ 漏えい等事案への対応
      1 漏えい等事案が発覚した場合に講ずべき措置
      2 実際の大規模漏えい事故
     Ⅴ 個人情報とプライバシー
      1 プライバシーに関連する法令の定め
      2 事後的対応:刑罰
      3 事後的救済:不法行為に基づく損害賠償等
      4 事後的救済:情報漏えい事故と損害賠償
      5 SNSによる個人情報の漏えい

分野

社内研修講師・セミナー講師

弁護士

坂東利国

相談者向け補充説明

この資料では、法人破産を検討する際に知っていただきたい基本的な事項について説明します。

法人破産の一般的な流れ

法人破産でよくある誤解

なぜ会社の破産には費用が必要なのか

会社の破産は、単に裁判所へ申立てを行えば終わる手続ではありません。会社を適切に整理し、事業を終了させるためには、様々な作業や手続が必要になります。

例えば、

  • 事務所や店舗、倉庫の明渡し
  • 残置物の撤去や処分
  • 商品在庫や備品の売却・処分
  • リース物件の返還
  • 機密文書や個人情報を含む資料の整理・廃棄
  • パソコンやサーバー等のデータ整理
  • 従業員関係書類の整理

などです。

これらは、会社が事業を終了する以上、破産するか否かにかかわらず必要となる作業であり、多くの場合、運搬費用や廃棄費用、明渡費用等が発生します。

また、これらの作業を何もしないまま破産手続に移行すると、後に破産管財人が対応しなければならず、結果として手続が長期化したり、より多くの費用が必要になったりすることがあります。

そのため、法人破産の実務では、弁護士が受任した後、破産申立てを行うまでの間に、可能な範囲で残置物の整理や在庫の処分、明渡し準備等を進めておくことが少なくありません。これにより、手続をより円滑に進めることができ、結果として債権者や関係者の負担を軽減できる場合があります。

破産費用は何に使われるのか

裁判所へ支払う予納金は、主として破産管財人による財産調査や換価業務など、破産手続を適切に進めるための費用として用いられるものです。

また、申立代理人である弁護士の報酬についても、単に申立書を作成するための費用ではありません。会社の財産や負債の調査、債権者一覧表の作成、従業員対応、取引先対応、資料収集や整理、裁判所や破産管財人との対応など、多くの業務を行うための費用です。

破産費用は相談時に全額用意しておく必要があるのか

「破産に必要な費用が用意できていないので、まだ弁護士には相談できない」と考える経営者の方もおられます。

しかし、実際には、弁護士に相談した時点や受任した時点で、直ちに破産手続に必要な費用の全額を準備しておかなければならないとは限りません。

法人破産では、弁護士が受任した後、一般的には既存の債務の支払を停止し、会社財産や資金の管理を行いながら破産申立ての準備を進めることになります。

その結果、それまで借入金や買掛金等の支払に充てられていた資金を、破産手続に必要な費用や会社の整理に必要な費用に充てることができる場合があります。

そのため、弁護士受任後、一定期間をかけて資金管理を行いながら、予納金や申立費用、残置物処分費用、明渡費用等を確保し、その後に破産申立てを行うケースも少なくありません。

もちろん、事案によって必要となる費用や準備期間は異なりますが、「費用が十分に用意できてから相談する」のではなく、「まだ一定の資金が残っている段階で相談する」ことが重要です。

資金が完全になくなってから相談すると、必要な処分費用や予納金を確保できず、かえって破産手続の実施自体が困難になることがあります。

よくある考え方と実務上望ましい考え方

会社に十分な資金が残っていない場合

会社に十分な資金が残っておらず、会社財産だけでは破産手続に必要な費用を確保することが難しい場合もあります。

しかし、そのような場合であっても、直ちに破産申立てが不可能になるとは限りません。

事案によっては、会社財産の換価や資金管理によって必要な費用を確保できる場合があります。また、代表者個人が資金を拠出したり、代表者の家族や親族が任意に資金援助を行ったりすることによって、法人破産に必要な費用の一部を準備するケースも実務上見られます。

もっとも、代表者の家族や親族に会社の債務を支払う法的義務があるわけではありません。また、どのような方法が適切かは、代表者個人の資産状況や保証債務の有無などによって異なります。

そのため、会社の資金だけでは費用の準備が難しい場合であっても、「破産費用がないから相談しても意味がない」と考えるのではなく、まずは状況を整理し、どのような方法が考えられるかを検討することが重要です。

破産申立ては弁護士だけで進められるものではありません

法人破産について、「弁護士に依頼したら、あとは弁護士がすべて対応してくれる」と考えられる方がおられます。

しかし、実際の法人破産手続は、弁護士だけで進められるものではありません。

会社の事業内容や財産の状況、取引先との関係、在庫や備品の所在、帳簿や契約書類の保管場所などは、会社の代表者や役員の方でなければ分からないことが少なくありません。

そのため、法人破産では、

  • 会社財産や負債に関する情報提供
  • 帳簿や契約書類等の収集
  • 在庫や備品の確認
  • 残置物の整理や処分への協力
  • 事務所や店舗等の明渡し準備
  • 従業員関係資料の整理
  • 各種資料の確認や説明

などについて、代表者や役員の方々の協力が必要になります。

特に、残置物の整理や明渡し準備、会社財産の確認などは、代表者や役員の方の協力がなければ進めることが困難な場合が少なくありません。

申立代理人である弁護士は、法的な助言や手続の進行、裁判所や破産管財人への対応を行いますが、会社内部の事情を最もよく理解しているのは代表者や役員の方々です。

そのため、法人破産は「弁護士に任せれば終わり」というものではなく、弁護士と代表者・役員が協力しながら進める手続であるとご理解いただくことが重要です。

早期相談が重要です

早期に相談することは、直ちに破産を決めるという意味ではありません。会社の資金状況、債務の内容、従業員や取引先への影響を整理し、どの選択肢が現実的かを確認するためのものです。

裁判所に納める予納金や弁護士費用、各種処分費用は、「破産のための費用」というよりも、「会社を適切に終了させ、従業員、取引先、債権者への混乱をできる限り少なくするために必要な費用」と理解するのが実情に近いといえます。

法人破産では、相談が早ければ早いほど、残された資金や財産を有効に活用しながら、適切な方法を検討できる可能性が高くなります。

そのため、「破産費用が準備できてから相談する」のではなく、「経営に行き詰まりを感じた段階で早めに相談する」ことが、結果として会社や関係者の負担を軽減することにつながります。

経営状況に不安を感じた場合には、会社にどの程度の資金が残っているか、今後どの支払が予定されているか、従業員・取引先・賃貸物件への対応をどうするかを含めて、早い段階で専門家に相談し、今後の対応を整理することが重要です。